
働き方の多様化が進む現代において、オフィスワークとテレワークを柔軟に組み合わせた「ハイブリッドワーク」を導入する企業が急増しています。総務省や関連機関の調査を見ても、コロナ禍を経て完全なリモートワークから、対面コミュニケーションの価値を再評価するハイブリッド型へと回帰する流れは顕著です。
しかし、いざ導入を検討しても「自社の業種で本当に定着するのか」「出社組とリモート組の間でコミュニケーション不足に陥らないか」「労務管理が煩雑になるのではないか」といった不安を抱える担当者様も多いのではないでしょうか。実際に、制度をつくったものの形骸化してしまったり、逆に現場の混乱を招いてしまったりするケースも少なくありません。
本記事では、IT業界などの先進的な事例だけでなく、製造業やサービス業、自治体を含む具体的な成功事例を9つ厳選して分析し、ハイブリッドワークを成功に導くための共通点とポイントを解説します。
さらに、導入企業が必ずといっていいほど直面する「情報格差」や「ITリテラシーの壁」という課題に焦点を当て、それらを解決してオフィスとリモートの一体感を生み出すための具体的な環境整備についてもご紹介します。
組織の生産性を最大化し、誰もが働きやすい環境をつくるためのヒントとしてご活用ください。
ハイブリッドワーク導入の現状と企業が得られる3つのメリット
まずは、ハイブリッドワークがなぜこれほどまでに注目され、多くの企業で標準的な働き方となりつつあるのか、その定義と背景、そして企業側・従業員側双方にとってのメリットを整理します。
ハイブリッドワークの定義と導入が進む社会的背景
ハイブリッドワークとは、その名のとおり「オフィス勤務」と「テレワーク(在宅勤務やサテライトオフィス勤務)」を組み合わせた働き方です。どちらか一方に限定するのではなく、業務の内容や進捗状況、あるいは個人のライフスタイルに合わせて、従業員が主体的に働く場所を選択できるのが特徴です。
以前は「感染症対策」としての側面が強かったテレワークですが、現在では「経営戦略」としてのハイブリッドワークへと進化しています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、場所を選ばずに業務ができるインフラが整ったこと、そして労働人口の減少に伴い、多様な人材を確保する必要性が高まったことが背景にあります。企業は単に「集まって働く」場所を提供するだけでなく、「なぜオフィスに来るのか」「リモートで何を実現するのか」という、働き方の本質的な問い直しを迫られています。
企業側のメリット:コスト削減と優秀な人材の確保
企業にとって、ハイブリッドワーク導入のメリットは大きく分けて2つあります。
1つ目は、固定費の最適化です。全従業員が毎日出社することを前提としないため、オフィスのデスク数を減らすフリーアドレス制への移行や、オフィスフロアそのものの縮小が可能になります。削減できた賃料や光熱費などのコストを、IT環境の整備や従業員への還元といった「投資」に回すことで、より強固な経営基盤を築くことができます。
2つ目は、優秀な人材の採用と定着です。勤務地や居住地の制約が緩和されることで、遠隔地に住む優秀な人材や、育児・介護などでフルタイムの出社が難しい人材を採用対象に含めることができます。また、「柔軟な働き方ができる企業である」というブランディングは、求職者に対して強力なアピール材料となります。既存社員にとっても働きやすさが向上するため、離職率の低下にも大きく寄与します。
従業員側のメリット:ワークライフバランスとエンゲージメント向上
従業員にとっての最大のメリットは、ワークライフバランスの実現と自律的な働き方の獲得です。
通勤時間が削減されることで、睡眠時間や自己研鑽、家族と過ごす時間を確保しやすくなります。特に子育てや介護中の従業員にとっては、キャリアを中断することなく働き続けられる重要な選択肢となります。また、集中して資料作成をしたいときは自宅で、ブレインストーミングやチームビルディングが必要なときはオフィスで、といったように業務特性に合わせて環境を選べることは、仕事へのモチベーション(エンゲージメント)と生産性の向上に直結します。
「会社に管理される」のではなく「自ら働き方をデザインする」という感覚は、プロフェッショナルとしての意識を高める効果も期待できます。
【業種別】ハイブリッドワーク導入企業の成功事例と共通する工夫

では、実際にハイブリッドワークを成功させている企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは業種や課題別に9つの成功事例を紹介します。
IT・情報通信業界:自社ツール活用とフルリモートの融合

IT業界は業務のデジタル化が進んでおり、ハイブリッドワークとの親和性がもっとも高い業界です。ここでは、ツール活用と文化醸成に成功している4社を紹介します。
事例1:サイボウズ株式会社
グループウェア開発を行うサイボウズは、ハイブリッドワークの先駆者として知られています。かつて「100人100通りの働き方」として有名だった同社の制度は、2024年に「100人100通りのマッチング」へと進化しました。個人の希望とチームの成果をすり合わせる対話プロセスを重視し、自由と貢献のバランスを明確化しました。
同社の特徴は、徹底した「情報の透明化」です。社内のやり取りは基本的に公開されたデジタル空間で行われ、出社していてもリモートでも情報格差が生まれない文化が根付いています。従業員自身がチームと対話しながら働き方を決定できる仕組みが、自律的な働き方を支えています。
事例2:日本マイクロソフト株式会社
日本マイクロソフトは、自社製品である「Microsoft Teams」や「Windows 11」などのテクノロジーを最大限に活用し、ハイブリッドワークを推進しています。特に注目すべきは、オンライン会議における臨場感の創出です。
オンラインホワイトボード機能や、資料と発表者の顔を同時に表示する機能などを駆使し、リモート参加者が「置いてけぼり」にならない工夫を凝らしています。また、オフィス自体も「コラボレーションの場」として再定義し、多様なミーティングスペースを設置しています。
事例3:Google(グーグル)
Googleは、週3日程度の出社を基本とするハイブリッドモデルを採用しています。2024年時点で、週3日以上の出社を「義務」として通知。従わない場合は雇用継続に影響が出る可能性があると明示しており、AI開発への投資集中と対面でのイノベーション創出を重視する方針へ転換しています。
同社の成功のカギは、「オフィスに来る意味の再定義」です。オフィスを「イノベーションと偶発的な出会いが生まれる場所」と位置づけ、カフェテリアや共有スペースの設計に注力し、一方で、在宅勤務中でもGoogle Workspaceを活用してシームレスに連携できる環境を整え、物理的な距離を感じさせないチームワークを実現しています。
事例4:株式会社PHONE APPLI
「ウェルビーイング経営」を掲げるPHONE APPLIは、オフィスを「CaMP(Collaboration and Meeting Place)」と名付け、キャンプ場のような開放的な空間に刷新しました。自然音やアロマを取り入れたオフィスは、社員が「行きたくなる場所」として機能しています。
一方で、テレワークも推奨しており、専用のWeb電話帳ツールなどを活用して、どこにいてもスムーズに連絡が取れる環境を構築しています。社員の健康とコミュニケーションの質を両立させた好例です。
サービス・メディア・多角化企業:現場とリモートの連携強化

顧客対応やクリエイティブな業務が多い業種でも、工夫次第でハイブリッドワークは可能です。
事例5:株式会社ぐるなび
飲食店の情報サイトを運営するぐるなびは、コロナ禍を機に「働き方進化プロジェクト」を発足させました。段階的に制度を緩和し、現在は部署や個人の判断で出社頻度を決められる体制を確立しています。
特徴的なのは、オフィス内の「フリースペース席」を大幅に拡充した点です。出社した際には部署を超えたコミュニケーションが自然と生まれるよう設計されており、テレワークで希薄になりがちな「横のつながり」をオフィスで補完する運用を行っています。
事例6:株式会社サイバーエージェント
メディア事業などを展開するサイバーエージェントでは、「リモデイ」という独自の制度を導入しています。これは特定の曜日を推奨リモートワーク日とするもので、チームごとに「この日は全員で集中作業」「この日は出社してアイデア出し」といったメリハリをつけることを可能にしました。
また、オフィスにはマッサージルームを完備するなど、出社時のウェルビーイング向上にも力を入れており、メリハリのある働き方が生産性向上に寄与しています。
事例7:株式会社ベネッセコーポレーション
教育・介護事業を展開するベネッセは、ハイブリッドワークへの移行にあたり、本部オフィスを全面リニューアルしました。フリーアドレスの導入に加え、独自の「勤怠管理ツール」を開発・導入した点がポイントです。
これにより、誰がどこで働いているか、今の体調はどうかといった情報を全社員が可視化できるようになりました。「姿が見えない」という不安をデジタルの力で解消し、心理的安全性を確保しながら制度を定着させています。
自治体・商社・インフラ:公平な環境整備とコミュニケーション改革

最後に、対面業務やセキュリティ要件が厳しい業種での事例と、商社機能を持ちながら自ら働き方改革を実践する企業の事例を紹介します。
事例8:リコージャパン株式会社
複合機などのオフィス機器を扱うリコージャパンは、自社がハイブリッドワークの実践モデルとなり、そのノウハウを顧客に提供しています。全国の拠点でフリーアドレス化を進めると同時に、ペーパーレス化を徹底し、紙の資料を電子化することで、場所を問わずに業務ができる環境を整えました。
また、サテライトオフィスの活用も積極的に行い、営業担当者が移動の合間に効率的に働ける環境を提供しています。
事例9:京都市左京区役所
自治体業務は個人情報を扱うためテレワークが難しいとされがちですが、京都市左京区役所では、防災会議や庁内会議のデジタル化を進めることで効率化を図っています。具体的には、左京区役所・さつき株式会社・株式会社日本HPの3者で「災害時等のデジタル化推進に関する協定」を締結し、山間部の出張所にデジタルホワイトボード「MIRAI TOUCH Biz」を設置し、災害現場と対策本部をリアルタイムで接続する体制を構築しました。
遠隔地の出張所や関係機関とのスムーズな情報共有を実現します。災害時などの緊急時にも、本部と現場を映像と音声でつなぐ体制を構築しており、ハイブリッドワークのインフラが住民サービスの向上にも直結している事例です。
導入の課題を解消し成功に導く「環境整備」と「ツール選定」

ここまで9つの成功事例を見てきましたが、これらすべての企業に共通しているのは、「制度」だけでなく「環境(ツール)」への投資を行っている点です。ハイブリッドワークを単なる「放任」にせず、
組織としての力を高めるためには、特有の課題を解決する環境整備が不可欠です。
失敗の要因となる「情報格差」と「ITリテラシーの壁」
ハイブリッドワークの導入に失敗する企業の多くは、以下の2つの壁にぶつかります。
- ●情報格差(情報の非対称性):
オフィスにいるメンバーだけで話が進んでしまい、リモート参加者が決定事項だけを知らされる、あるいはWeb会議でホワイトボードの文字が見えず議論に参加できない、といった状況です。これはリモート側の疎外感を生み、モチベーション低下の最大要因となります。 - ●ITリテラシーの壁:
高機能なデジタルツールを導入しても、操作が難しく一部の社員しか使いこなせないケースです。「接続設定に時間がかかり会議が始まらない」「操作に戸惑って意見がいえない」といったトラブルが続くと、結局「集まったほうが早い」という結論になり、ハイブリッドワークは形骸化してしまいます。
成功のカギは「誰もが直感的に使える」インクルーシブな環境
これらの課題を解決するために必要なのは、「インクルーシブ(包摂的)な環境整備」です。つまり、ITが得意な人も苦手な人も、オフィスにいる人も自宅にいる人も、分け隔てなく同じ土俵で議論に参加できるツールを選定することです。
成功事例で見た企業の多くが、大型ディスプレイや直感的なWeb会議システムを導入していたように、会議室のデジタル化はハイブリッドワークの要です。ここで重要なのは、PC画面の共有だけでなく、「手書きのニュアンス」や「場の空気感」まで共有できるデバイスを選ぶことです。
課題解決の決定打:電子黒板「MIRAI TOUCH Biz」の活用

そこで推奨したいのが、さつき株式会社が提供するビジネス向けデジタルホワイトボード「MIRAI TOUCH Biz(ミライタッチ・ビズ)」の導入です。
教育市場でシェアNo.1を誇る「ミライタッチ」のノウハウをビジネス向けに応用したこの製品は、ハイブリッドワークの課題解決に特化した以下の特長を持っています。
- 誰でも使える圧倒的な操作性(ITリテラシーの壁を打破):
「MIRAI TOUCH」はもともと、先生や子どもたちが説明書なしで使えるように設計されています。専用ペンは不要で、指一本で滑らかに書き込みや操作が可能で、スマホやタブレットのような直感的なUI(ユーザーインターフェース)であるため、デジタル機器に不慣れなベテラン社員でもストレスなく会議に参加できます。 - オールインワンで情報格差を解消:
ホワイトボード機能、Web会議機能、PC画面共有機能がこれ一台に集約されています。Web会議ツール(Zoom、Teams、Google Meetなど)とシームレスに連携し、リモート参加者の顔を大画面に映し出しながら、同じ画面上の資料に双方向から書き込みを行うことが可能です。「同じ資料を見て、同じ場所に書き込む」体験は、物理的な距離を超えた一体感を生み出し、情報格差を埋めます。 - 準備時間の短縮と効率化:
電源を入れるだけで即座に立ち上がり、ケーブル一本あるいはワイヤレスでPCと接続できるため、会議前の煩わしいセッティング時間がゼロになります。
事例にもあったように、ハイブリッドワークの成功には「ツールの使いやすさ」が決定的な差を生みます。「MIRAI TOUCH Biz」は、単なる会議ツールではなく、オフィスとリモートをつなぐ存在として機能し、組織全体のコミュニケーションを円滑にします。
まとめ
ハイブリッドワークは、単に「出社しなくてもいい」という制度をつくるだけでは成功しません。
従業員がどこにいても公平に情報にアクセスでき、ストレスなくコミュニケーションが取れる「環境」を整えることで初めて、その真価を発揮します。
今回ご紹介した9つの成功事例からは、各社が自社の課題に合わせてルールを設計し、ITツールへの投資を行っていることが分かります。特に、オフィスとリモートの壁を取り払うためには、高度なスキルを要求せず、誰もが直感的に使えるツールの選定が重要です。
もし、御社がハイブリッドワークの導入や定着にお悩みなら、「情報の入り口」となる会議室の環境を見直してみてはいかがでしょうか。
記事で紹介した「MIRAI TOUCH Biz」のように、ITリテラシーに依存せず、直感的に操作できるデバイスを取り入れることで、ハイブリッドワークの円滑な運用と、組織のさらなる活性化を実現してください。
