導入前の課題
・航空整備士の整備・点検スケジュールを管理する際に、導入前は「手書きのホワイトボード」を使用。整備士の名前が書かれたマグネットを利用し、ホワイトボードにペンでメモをするなど、各現場と他空港への情報共有に時間を費やしていた。
・万が一のトラブル発生時における対処法や解決までの過程など、緊急対応時の細かな時系列や対処法を記録する術が明確に決まっておらず、ノウハウの蓄積しにくい環境であった。
導入後の効果
・「ミライタッチ」本体で、航空整備士の電話番号や現在の作業場所といったリアルタイムの情報やデータを管理するようになり、現状把握や緊急時の対応を即座に共有できるようになった。
・クラウド型のキャンバスツールを「ミライタッチ」にインストールし、図や文字を自由に書き込みながら、打ち合わせができるようになった。視覚的に分かりやすくまとまった情報をリアルタイムで各現場と他支店に共有できるようになり、業務が円滑に進むように変化。
・打ち合わせの内容は、時系列含めてすべてログとして残せるため、ノウハウ蓄積に役立っている。
この度、株式会社JALエンジニアリングで航空整備士として働く、足原靖様、中山慎一様、整備企画・計画業務を担う中道大輝様に「ミライタッチ」の導入についてインタビューを実施しました。
株式会社JALエンジニアリングは、「JAL」の航空機の機体点検整備や運航整備における整備・改造を主に行う会社です。東京国際空港・成田国際空港・大阪国際空港をはじめ、全国の空港に支店を構え、空の安全を守っています。
2023年11月からトライアルで「ミライタッチ」を利用し、2024年4月に正式導入となった同社。航空機整備の現場で、「ミライタッチ」はどのように活用されているのでしょうか?導入してみての感想や変化について、さつき(株)の柳颯人よりお話を伺いました。
約600名の人員配置やトラブル対応に「ミライタッチ」を活用
ーーどのような場面で「ミライタッチ」を利用していますか?
足原:
羽田空港には約1200名の航空整備士がおり、そのうちの半分は到着後〜出発前の間で点検を行う「運航整備」、もう半分は飛行機を格納庫に入れて点検を行う「機体点検整備」のチームに所属しています。1機あたり平均3〜4名で整備・点検にあたるのですが、その人員配置の打ち合わせや、トラブル発生時の緊急会議などに「ミライタッチ」を使っています。
中山:
航空機整備業界には「4M」という言葉があります。Man(人)、Machine(機械・ツール)、Method(方法・方式)、Material(材料)の頭文字を取ったもので、整備・点検に欠かせない4要素を表しています。トラブルの解決方法を話し合う場面では、「ミライタッチ」を使いながら、この4要素をどこからどのように手配するかを即座に決めていきます。
たとえば雷で飛行機の一部分が故障してしまった場合、どの空港から誰が修理に向かうのか、どんな修理ツールが必要なのか、その故障に適した修理マニュアルがあるか、材料はすべてそろっているか…と、関係部門と連携しながら的確に話し合いを進めていくのです。
長期間トライアルができ、機能性の高さをじっくり確かめられた
ーーなぜ「ミライタッチ」を導入したのですか?
中道:
導入する前までは、各社員が集まって何かを話し合う際には「手書きのホワイトボード」を使っており、情報共有やノウハウ蓄積がしにくいという課題を抱えていました。
当社には、“その道のプロ”と言える熟練の航空整備士が多く在籍していますが、ある人は羽田、ある人は伊丹(大阪)…と日本全国の拠点に分散してしまっているため、ノウハウを1つに集結させるのが難しかったんです。情報やノウハウを効率的に集結させられるツールがないかと考えた結果、デジタルホワイトボードにたどり着いたんです。
「ミライタッチ」はその課題を解決できるツールだと感じた上、約5ヶ月という非常に長い時間をかけてトライアルをさせてもらえたことから、安心して導入ができました。
ーーそう言っていただけて何よりです。現場で働く中山さん、足原さんはいかがですか?
中山:
デジタルホワイトボードのメーカーは他にも数社あるのですが、それぞれショールームに伺って試した末、我々は「ミライタッチ」を選びました。
決め手は主に2つで、1つ目は操作性です。タッチパネルの使用感や画質など、使いやすいかどうかを重視しました。そして2つ目は、多機能であることです。導入当時はまだどのような使い方が当社にマッチするかが不透明だったため、いろいろな使い方ができるものを選ぼうと考えました。
足原:
正直にお話しすると、現場では導入に反対する社員もおり、最初は私もその1人でした。航空機整備は人々の命を守る「インフラ」の仕事であるため、新しいものを導入する際には石橋を壊れるほど叩いて渡らないと気が済まない性質なんです。また、整備士にはそれぞれiPadが支給されていたため、デジタルデバイスはそれだけで十分だと感じていました。
しかしトライアルで利用させてもらったところ、「ミライタッチ」の前に人が集まり、お互いのノウハウを共有しあったり、解決方法を一緒に模索したりする社員の姿を目の当たりにしました。ミライタッチを通して、以前よりも会話する時間が増えたんですね。航空機整備は1人ではなく何人もの技術者が集まってチームワークで行うものであるため、やはりface to faceのコミュニケーションが欠かせないのだと肌で実感しました。
外部ツールをインストールすることで、飛躍的な業務効率化とノウハウ蓄積に成功
ーー「ミライタッチ」を導入して、何か変化はありましたか?
足原:
変わるも何も、アナログなホワイトボードから「ミライタッチ」に移行したため、時代が昭和から令和にタイムスリップしたような感覚でしたね(笑)。
特に便利なのが、全整備士の携帯電話の番号が「ミライタッチ」内のスプレッドシートにまとまっており、スマホのように少し操作するだけですぐにその人へ電話できる点です。
当社の整備士は毎日番号が異なる社用携帯電話を共有しており、勤務当日に誰がどの携帯電話を持っているのかを把握することが必要でした。しかし、一昔前までは携帯電話の番号を把握する管理ツールがなく、無線で「◎◎さんに連絡を取りたいんですが電話番号は分かりますか?」という会話が飛び交っていたんです。ミライタッチ導入後は、その無駄な時間がなくなり、業務効率が飛躍的に高まりました。
中山:
私が行っている運航整備は、飛行機が着陸してから離陸するまでのわずかな時間で点検・整備しなければならない、1分1秒を争う仕事です。これまでは、何か問題が起こった際の連絡手段は電話かメールしかなく、情報共有に無駄な時間と手間がかかっていました。
現在は、同時に複数人が閲覧・編集できるクラウド型のキャンバスツールを「ミライタッチ」にインストールしたことで、視覚的に分かりやすくまとまった情報を瞬時に共有できるようになりました。各々がそのキャンバスに写真を入れたり、文字を書き込んだり、図を描いたりする様子もリアルタイムで反映されるので、情報整理や意志決定するスピードが格段に高まりましたね。
さらに言うと、トラブルに対応した際の考え方のプロセスや、解決までの時系列もすべて記録に残せるので、ノウハウ蓄積にも役立っています。
スピードが物を言う忙しい現場にこそ、ミライタッチが必要
ーー最後に、どのような会社に「ミライタッチ」をおすすめしたいか教えてください。
中山:
我々と同じように、1分1秒を争う熾烈な現場にはとてもマッチしていると思います。インフラを支える業界、たとえば医療現場などは、何事も慎重に進めようとして職場環境がアナログなまま進化していないケースも多いのではないでしょうか。それこそかつての我々のように、連絡手段が電話とメールしかない現場も多いと思います。
しかし「ミライタッチ」を導入すれば、電話だけでは把握できない視覚的な情報や、文章や写真だけでは判断できない生の声を瞬時に伝えることができ、情報共有のスピードが驚くほど高まるんです。そのため、早急に物事を伝達・判断しなければならない現場にこそ、「ミライタッチ」をおすすめしたいですね。
中道:
「ミライタッチ」を導入する際のネットワーク設定やソフトの導入なども、最後まで責任をもって支援していただけたので、IT知識に不安がある会社さんにもおすすめです。